医療的ケア児の食事って普通と違うの?

我が子、あゆくん(7)は生まれてから半年間、気管挿管をしていた。
気管が狭くて息が苦しかったからだけど、固いチューブが喉を通り、人工呼吸器と繋がれた状態で半年、というのはさぞかししんどかったろうと思う。
かくして気管を切開することで呼吸が保たれるようになり、晴れて自宅に帰れた訳だけど、帰ったころにはもう生後7か月。
あれ、気づけば離乳食が始まってもいい頃じゃないの。
医療的ケア児は食べられないこともある?
気管挿管をしている間は、動いてチューブが外れてしまったら呼吸が出来ない、という命の危機に陥るため、口から何かを摂取することが出来なかった。
当然、ミルクや母乳も飲めないから、胃に通したチューブでミルクを注入して栄養を摂っていた。
母は、あゆくんに母乳を飲んでもらう日を夢見て、手元に子どもはいないのに、夜中も4時間おきに起きて搾乳していた。
虚しいやら、切ないやら。
気管切開して、管が抜けて呼吸が苦しくなる危険が無くなったため、母乳を飲ませてもいいですよ、と言われた時には、高揚したし緊張もした。
果たして、あゆくんは母乳を飲めるのだろうか。
母の不安も知らず、あゆくんはさも当然のようにおっぱいをくわえる。
そして、チュウチュウ、上手に飲んでいる!!
おっぱいに吸い付く赤子の力、「吸啜反射」は、生後半年くらいには失われるものらしいけど、あゆくんはギリギリ残っていたのだ!!
えーん。良かったよー。
そう、ミルク飲めた!バンザイ!という状態で自宅に帰ってきたのだ。
それで、離乳食の話。
本を見ながら、月齢に合わせた食事を作っていく。
すり潰したり、ペーストにしたり。
口に入れて溶けてなくなるようなものは、少量だけどうまく食べられているようだった。
でも、段階が進むにつれ、どうもおかしいことに気付く。
口の中で、食べ物をつぶせない、かめない。小さくならないので、飲み込めない。
同じ月齢くらいの子は、うどんとか、小さく切った鶏肉とか、お魚とか、手掴みでじゃんじゃん食べているのに、あゆくんはそもそも、食べることに全然興味がないように見える。
ある時、普段はいつまでもなくならない口の中の食べ物が割とすぐになくなったので、お、きょうはけっこう食べるじゃない!と思って嬉しくなっていたら、空っぽのはずの口の中に、大きな食べ物の塊がボテっと再登場した。
え、いずこから… どうも、口に入れた食べ物をゴックンしきれず、いつの間にか塊になり、口の上部にペッタリ張り付いていたために、消えたように見えただけだったのだ!!結局何一つ食べられていなかった!これは、マズイ!!!
訓練と経験で食べ方が変わる!

そこからは理学療法士さんに相談したり、歯科の先生に相談したり。パンスティックを奥歯に置いてカミカミの練習をするなど、訓練もした。
そんな中で見えてきたのが、「舌の動きが悪い」ということ。舌が動けば食べ物を潰せるし、歯の上に持っていってカミカミも出来る。
あゆくんは挿管が長かったことで、口の中で舌を動かす、ということをしてこなかった。0歳児といえば、舌と唇を上手に使ってミルクをチュウチュウ飲み、ヨダレをたっぷり流しながら色んなものをナメナメして、形とか硬さとか味とか、いろんな感覚を獲得していく。
そうかあ、こんな所でも、長かった入院の影響が出るんだな…。(けいこらむ♯1に引き続き…)
母も息子も、「食」の時間が苦痛という、なんともはがゆい日々を過ごしたけれど、3歳くらいになると、経験とともに次第に口の中の動きも改善していった。
食べることが上手になってくると、食自体にも興味を持ってくれ始め、
次第にオヤツを欲すようになってきた。母はこれにピカーン、である。オヤツはご褒美になるからね!
今でも噛み切る作業は苦手だし、飲み込むまでに時間がかかるので、食材によってはモリモリ、という訳にはいかないけれど、「ぼくはカレーとたまごごはんが大好物なんだよ」なんて、好物まで披露しだした。
成長とともに好物が変わるのと同じように、きっと食べ方もまだまだ変わっていくんだろうな。