気管切開児と声の関係

気管切開児と声の関係

「気管切開をすると、声が聞けなくなる。」

というのは、よく耳にする話です。

「気管切開」とは、呼吸を保つためにノドを切開し空気の通り道を作るわけですから、空気を吐き出す時はノドの穴から出て、声帯を通りません。物理的には、「声は非常に出しにくい」ことになるのです。

気管切開を必要としているけれど、声が聞けなくなるから躊躇している、と言う方もいらっしゃることでしょう。

実際のところ気管切開児の「声」はどうなるのでしょうか。我が家の葛藤とともにお伝えしていきます。

気管切開しても声が出せる子がたくさんいる

筆者の子どもの呼吸が苦しく、気管切開の決断を迫られた時、当時の主治医に、声はどうなるのか尋ねたことがあります。その時先生は、「人それぞれだけど、けっこう声が出せる子もいる」と答えました。きちんと呼吸を保つため、ノドの穴から気管へとチューブを通す(カニューレといいます)のだけど、そのチューブと気管の間に隙間が出来る場合もあり、そうすると息が上に抜けて声が出せる、という訳ですね。

声が出ると出ないとでは、コミュニケーションの上で大きく変わってきます。

気管切開をしているお子さんやご家族にたくさん出会ってきましたが、それなりの活動量があるお子さんに関しては往々にして「声は出せるようになった」と言っていました。それはかすれていたり小さかったりもするけれど、コミュニケーションを取るには十分なくらいだと。

しかし、筆者の子どもは、待てど暮らせど、声が全く出ませんでした。

気管切開児 声が出せないパターン

筆者の子どもは、2歳になっても3歳になっても声が全く出ませんでした。

身体が大きくなると気管も太くなり、隙間もできやすくなるため、一般的には少しずつ声が出始めてもおかしくないはず。でも、周りの気管切開児と比べると、異様なくらい出ませんでした。

声が出せないことで困るのは、コミュニケーションが取りにくいのはもちろんだけど、泣いているか笑っているかも分からないところ。

痰の音がガハハ、と鳴って、何か楽しいことでもあったのかしらとニッコリしながら振り向くと、大泣きしていてビックリ!なんてこともありました。

危険なことがあった時や、しんどい時なんかに、「ギャオース」と泣いて知らせてくれない、という状況は、とても恐ろしいものです。

肺活量が足りないのか、とか、まだ身体が小さくて隙間が出来ないのか、とか、色々悩みましたが、たくさん検査をして調べて、最後に行き着いた答えが「声帯がガッチリ固まっていて、空気の抜ける隙間がない」ことでした。

筆者の子どもは挿管が長かったことで声帯が傷付き、2次障害で固まってしまっていたのですが、あまりにガッチリ固まりすぎて、呼吸と同時に声も失っていたのです。

気管切開児の声が出る、出ないに関しては、気管切開に至る根本的な要因に大きく左右されるのだ、ということを理解しました。

気管切開=声が出せない訳ではない

我が子は結局、声帯をバルーンで広げる、という処置を何度か行うことで声が出せるようになりました。気管切開の穴はもちろん空いていましたけど、聞き取れるくらいの声が出せました。つまり言えることは、気管切開=声が出せない という訳ではないということ。状況次第ではありますが、可能性は十分にある、と言えると思います。

ちなみに我が子が初めて声に出してくれた言葉は、「ママ、だいすき」

当然、これまで話したことが1度もないので、「あわ、あいうい」というような母音ばかりのかすれた声でしたけれど、当時使っていた手話と一緒に言ってくれたので十分に伝わりました。これには泣きました。

気管切開をする、という選択だけでも辛いのに、更に声まで失うかも、となると、親としてどうしてあげればいいかとても悩みますが、お子さんの状況によっては話せる方も多い、というのを知っていて頂ければと思います。

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